- く
- I
く(1)五十音図カ行第三段の仮名。 軟口蓋破裂音の無声子音と後舌の狭母音とから成る音節。(2)平仮名「く」は「久」の草体。 片仮名「ク」は「久」の初二画。IIく(接尾)〔上代語〕活用語に付いて名詞化する。 四段・ナ変・ラ変の動詞, 形容詞およびそれに準ずる活用の助動詞の未然形(助動詞「き」には連体形)に付く。 その他の用言には「らく」の形が付く。→ らく(1)上の活用語を体言化し, 「…こと」の意を表す。
「黄葉(モミチ)散ら~は常をなみこそ/万葉 4161」「たまきはる短き命も惜しけ~もなし/万葉 3744」
(2)「言ふ」「申す」などに付いて会話文を導き, 「…ことには」「…のには」の意を表す。「かぢとりの言は~, この住吉の明神は例のかみぞかし/土左」
(3)助詞「に」を伴って, 「…なのに」「…というのに」の意を表す。「我やどを見きとな言ひそ人の聞か~に/古今(恋五)」
(4)文末にあって詠嘆の意を表す。 助詞「も」や「に」を伴うこともある。「み吉野の玉松が枝は愛(ハ)しきかも君がみ言を持ちて通は~/万葉 113」「妹が寝(ヌ)る床のあたりに岩ぐくる水にもがもよ入りて寝ま~も/万葉 3554」
〔ク語法, またはカ行延言の語尾ともよばれる。 語源的には用言の連体形に, 事・所を意味する「あく」という語が付き, 母音の融合・脱落現象を起こしたものといわれる(例, 「言ふ」+「あく」→ 「言はく」)。 この説は「く」「らく」を統一的に説明することができるが, ただ, この場合「あくがる」の「あく」だといわれる体言「あく」の存在と, 助動詞「き」に対しては「言ひしく」のように母音変化を起こさないという点で問題が残る〕IIIく【九・玖】(1)数の名。 一〇より一つ少ない数。 ここのつ。 きゅう。(2)九番目。〔「玖」は大字として用いる〕IVく【区】※一※ (名)(1)地域などをいくつかに分けた, その一つ一つ。「気候~」「路線~」「解放~」
(2)地方自治法において設けられた行政上の単位となる地域。 自治権をもつ法人である自治区(特別区・財産区)と事務処理のための便宜的な行政単位である行政区(指定都市の区)とがある。→ 財産区(3)行政上の必要から定められた区域。 学区や選挙区など。※二※ (接尾)助数詞。 分けられた区域・区間などを数えるのに用いる。V「全線一~」
く【口】※一※ (名)〔仏〕 くち。 また, 言葉。「~悪説」
→ 口業※二※ (接尾)助数詞。(1)人や動物などを数えるのに用いる。「大きなる亀四~を売る/霊異記(上訓)」
(2)口のあいている器物を数えるのに用いる。「瓶四~, 坏四~/延喜式(神祇)」
(3)刃のある武器・農具を数えるのに用いる。VI「太刀一~/延喜式(神祇)」
く【句】※一※ (名)(1)言葉や文章の中の一区切り。(2)文の中で, ある一つの意味を示す単語のまとまり。 文の成分となる。「副詞~」「従属~」
(3)詩歌を構成している単位。 (ア)和歌・俳句などで, 韻律上, 一まとまりとなる五音または七音の区切り。 「二~切れ」(イ)連歌・俳諧の発句(ホツク)または付句(ツケク)。 俳句。 「長~(=一七音)」(ウ)漢詩で, 四字・五字・七字などからなる一まとまり。→ 二の句(4)格言。 慣用句。※二※ (接尾)助数詞。 連歌・俳諧の発句・付句や俳句・川柳などの句を数えるのに用いる。VII「表八~」「応募するのは三~まで」
く【垢】〔仏〕 煩悩(ボンノウ)。VIIIく【来】⇒ くるIXく【消】(1)とけてなくなる。 消える。「立山の雪し〈く〉らしも/万葉 4024」「梅の花早くな散りそ雪は〈け〉ぬとも/万葉 849」
(2)草木などがしぼむ。 また, 死ぬ。「朝(アシタ)咲き夕(ユウヘ)は〈け〉ぬる月草の/万葉 2291」「朝露の〈け〉やすき我(ア)が身/万葉 885」
〔主として上代に用いられた。 未然形・終止形の用例もあるが, 大半は連用形で, 連体・已然・命令形の用例を見ない。 未然形・連用形の「け」について, 動詞「きゆ(消)」の未然・連用形の「きえ」の変化したものとする説もあるが, 上代には「消ゆ」の用例はきわめて少なく, 「きえ」の確例もない〕Xく【矩】外惑星の視黄径と太陽の視黄径とが九〇度の差となる現象。 また, その時刻。 太陽の西側で矩になる時を下矩または西矩, 東側で矩になる時を上矩または東矩という。XIく【苦】(1)つらいことや苦しいこと。 苦労や苦痛。「~あれば楽(ラク)あり」
(2)〔仏〕〔梵 duḥkha〕身心を悩ます状態。~にする「苦に病む」に同じ。「病気を~する」
~にな・る心配の種になる。 気がかりのもとになる。「貧乏は~・らない」
~に病(ヤ)・むひどく気にして苦しみ悩む。 苦にする。 苦を病む。「些細(ササイ)なことを~・む」
~は楽(ラク)の種(タネ)苦労はやがて幸福に通ずるもととなるということ。~もなく苦労することなく。 簡単に。 たやすく。XII「難問を~解く」「何の~勝つ」
く【躯】助数詞。 仏像などを数えるのに用いる。「仏の立像を造り奉れる事十二~/今昔 6」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.